E・A・ポウに『群集の人(The Man of the Crowd)』という短篇がある。
いろいろな解釈があるようだが、初読の際、個人的に思ったのは「ずいぶん閑な人がいるもんだ」ということである。
その後、「あ、探偵ごっこのハシリなんだ」と思うようになった。流石に「探偵小説の始祖」と言われるだけのことはある、と。
昨今、「今じゃストーカーに当たるんじゃないか」とも思うようになった。
この短篇が発表されたのは1840年だが、それから一世紀あまり経た1943年、R・ブラッドベリの『群集(The Crowd)』という短篇が発表された。
前者の叙述は一人称で後者は三人称だが、ほぼ視点は同じである。
前者の場合、対象はタイトルどおり一人で、行動パターンも単に徘徊(?)するだけだが、後者の場合、対象はタイトルどおり集団で、行動パターンに「悪意」が潜む。
近頃の、匿名でのネット書き込みによる騒動(?)をぼんやりと眺めながら、ぼんやりとそんなことを考えた。