メデューサの首 1
2022-05-24


 ダナエ母子はこの島で無事に月日を送っている中(うち)に、ペルセウスは立派な青年になった。成長するに従って、ペルセウスは、この島の人とはまるで競べものにならない程、姿も美しく、身体(からだ)も大きく、力も強く、心も勇ましい青年となった。それと共に、彼が生れた時には、まだほんの少女であったダナエは、年々(ねんねん)に女の美しさが添(そ)わって、今ではこの島には見られないような美しい女となった。ダナエの美しい姿は、何時(いつ)までも老王ポリデクテスの目につかずにはいなかった。王は折さえあればダナエに近づいて、いろいろと気を引いて見た。けれどもダナエは、一旦大神ゼウスに委(まか)せた身を、このキクラデスの島人に汚さそうとは思わなかったので、彼女(かれ)は何時もすげなく王の言う事をはねつけていた。彼女(かれ)の後(うしろ)には、ペルセウスの岩丈(がんじょう)な腕があった。ペルセウスが側(そば)にいる間は、王もうっかり手が出せなかった。

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